実家には今年10歳になるトイプードルの空(くう)がいる。
空はおとなしい。ワンワンキャンキャン吠えたり、理不尽ないたずらをすることがない。
(空を家において家族で長時間遊びに出かけると、ご立腹です!といわんばかりに部屋の隅っこにおしっこをされるが)
あまりにおとなしいので初めて空と出会った夜、私は空の存在に気づけなかった。
大学2年生の春休み、私はオーストラリアに2か月ほど短期留学に行っていた。
英語は全然聞き取れず、仲良くなったルームメイトは先に留学期間を終えて帰ってしまうし、日本食は恋しくてたまらないしで後半はしおしおのしょげしょげになっていた。
なんとか留学期間を終え、空港から家までの車内では久しぶりに顔を合わせた親にああでもないこうでもないと弾丸トークを繰り広げ、家について美味しいご飯を食べてはまだ終わらない弾丸トークを繰り広げ、満腹になって床にゴローンと横になりながらも弾丸トークを、、、というところで、ふと不自然に布がかかった箱のようなものが目に入った。
あんなものあったっけ?と思いつつも、2か月も間が空いているのだから模様替えくらいするかと一人納得していると、父も母も妹もなんだかソワソワチラチラその箱を見ている。
3人で目くばせしたかと思えば父が
「この部屋でなんか気になるところないか。」
「えー?強いて言えばこんな箱あったっけ?」
「開けてみなくていいのか。」
開けてみなくていいのかってなんなんだ。わざわざ開けてみないだろ。と思いつつも、そんな風に言われたからには開けてみる。
すると、いたのだ。犬が。アプリコット色のふわふわでころころで小さいボールのような犬が。
「どぅぇぇぇえええ!?どうしたのこの犬!かわいい!てか、おとなしっ!ぜんっぜん気づかなかったよ!!」
「空ちゃんが、あまりにも鳴かないから焦った~。いつまでも気づいてもらえないんじゃないかと思った。」と母は言ったが、鳴かないどころか物音ひとつしなかったよ、、、?新しい人間の気配を感じてはしゃいだりしないんだ、、、本当に犬か?と思った。
その後ゲージから出すところころと走り回り(走り回りというか転げまわり)、私のパーカーのひもをぐいぐいと引っ張って楽しそうに遊んでいたので”犬だな”と思った。
人形のように小脇に抱えられてもじっとおとなしくし、すれ違う子供に(ママ、かわいいお人形さん!)といわれてしまうところも、久しぶりに帰省した私を一通りお出迎えしたら私のカバンをクンクンと嗅いで自分へのお土産を図々しく探すところも、不満があればフンスッ!と鼻を鳴らしてくるところも、トイレのために外に出してほしいとき、こちらが寝ていようと枕もとで起きるまで足をシャッシャシャッシャとするところも、おいしそうなものを食べていると”交換しましょ”といわんばかりにドックフードを一粒私の膝に置いてくるところも、全部全部かわいいけれど、私がとりわけ好きなのは空の寝ている姿である。
くるんときれいに丸まっていることもあれば、おなかをおっぴろげているときもあるし、私の脇に頭だけ押し込んできてそのまま寝てしまうときもあれば、ぱたりと横向きになって寝ている時もある。
夏の夜は私たちもリビングで寝る。
たいていの場合、空は母のもとへ行き、母と一緒に寝るが気まぐれに私のところに来て一緒に寝てくれることがある。
腕枕をすると、私の伸ばした腕に頭をこてんとあずけ、しばらくするとぷすうぷすうと寝息をたてる。
その鼻息や腕に感じるぬくもりが愛おしすぎてニマニマしながら顔を眺めていると、たいてい寝返りを打たれる。
無防備な首元に顔をうずめて穀物のような香ばしい何とも言えない香りを堪能していると、顔にてしっと足を置き、ぐーーんとのばして距離を取られる。
そのまま起きて母のところに行ってしまっても、さっきまでここで一緒に寝てくれていたという事実がいつまでも嬉しいのだ。
このブログを始めてみようと思ったとき、なぜか空の寝顔が思い浮かんだ。
だからこの分を記念すべき一番初めの投稿にしようと思う。
p.s.表題の写真は数ある空の寝顔の中で一番お気に入りのもの。
(アプリコット色だった毛はものの数ヶ月で真っ白に)
カメラを向けるとうっすら起きてしまうことがあるがこの日は爆睡。
本当に気落ちよさそうな顔で寝ているから、この写真を見るとなんだか眠たくなってくる。

